生保による「劣後債」の資金調達が増えていることについて

スポンサーリンク


f:id:semiken:20161010175529j:plain

こんにちは、せみけんです。

 

2016年6月21日の日本経済新聞にこんな記事がありました。

「生保資本増強相次ぐ」

生保の劣後債の発行に伴う資本増強が相次いでいるようです。

劣後債ってあまり聞きなれない言葉だと思ったので、主に劣後債について解説してみたいと思います。

 

 

1.バランスシートのおさらい

2.資金調達には、劣後債と優先株もある

3.なぜ、劣後債が相次ぎ発行されているのか

 

 

 

 

1.バランスシートのおさらい

f:id:semiken:20160621120859p:plain

 

バランスシートのおさらいです。

右から左に考えると分かりやすいです。

右側が「お金の源」で、どうやってお金を引っ張ってきたかです。

 

 

(1)負債について

負債にもいろいろありますが、ここでのイメージは、借入金(社債も含む)です。

借りているお金なので、いつか返さなければなりません。

借入金・社債の特徴は、以下の通りです。

・定められた期間で、借入金を返さなければいけない。

・定められた利率の利息を支払わなければいけない。

 

 

住宅ローンをイメージすると分かりやすいですが、例えば、10年で1,000万円を固定金利1%で借り入れれば、初年度は、1,000万円×1%なので10万円の利息が発生します。

 

 

(2)純資産について

資本金が主になるのですが、簡単にいうと、株式(普通株式)の発行により得られるお金です。

 

特徴は、特定の期間で資本金を返す必要はありませんが、株主は、株式保有により、A.株式(株価)の上昇、B.株式からの配当を望んでいます。

 

株主としては、株式として投資したので、会社として成長することによる株式の値上がり期待が一番の保有目的です。投資した会社が無駄に現金を余らせているなら、配当し還元してほしいというのも期待しているところです。

 

 

(3)資産について

集めてきたお金で、例えば設備投資を行い、会社として収益を上げることを目指します。

 

 

f:id:semiken:20160621135655p:plain

①借入金(負債)については、150億円を金融機関から調達

②純資産については、50億円を株式発行(普通株式)により調達

③資産については、借入金と資本金のお金合計200億円で土地、設備を購入

 

 

2.資金調達には、劣後債と優先株もある

 

f:id:semiken:20160621135937p:plain

 

 

(1)劣後債について

借入金(社債)の他に、資金調達方法の一つとして、劣後債の発行があります。何が劣後(劣っている)しているかについてですが、元本および利息の弁済順位が劣後しています。劣後債は、負債に分類されます。

 

①の借入金に対して、弁済順位が劣後しているので②劣後債です。ただし金利やクーポンが高めに設定されます。投資家としては、高い利回りを貰う代わりに、弁済順位が劣後していることを受け入れます。

 

企業が社債を発行する際、通常無担保で発行される社債を一般無担保社債もしくは優先社債(シニア債)というが、一般無担保社債と比べて、元本および利息の支払い順位の低い社債を劣後債ないし劣後社債(またはシニア債に対しジュニア債)と呼ぶ。債務不履行のリスクが大きい分、利回りは相対的に高く設定されている。(野村證券HPより)

 

(2)優先株について

優先株の方は、④の普通株式に対して、優先して配当や財産を受けとる権利があります。日々、株式市場でやりとりしている株式は、④の普通株式です。優先株は、株式の一種で純資産に分類されます。

 

普通株式とは異なる条件や権利を付した種類株式のうち、普通株式に比べて、剰余金の配当を優先的に受ける、あるいは残余財産の分配を優先的に受ける、あるいは両方について優先的に受ける、という権利をもつ株式のこと。(野村證券HPより)

 

企業が倒産した際には、①⇒②⇒③⇒④の順番で弁済されます。弁済順位のことを具体的に考えてみます。

 

f:id:semiken:20160621145105p:plain

仮に①、②、③、④の金額で資金調達したとしましょう。

 

土地100億円、設備100億円で事業を行っていましたが、赤字が続き倒産することとなりました。会社に残っているのは、土地と設備だけです。

 

土地については、購入時100億円の価値があり、現在価値も100億円の価値があります。

設備については、購入時100億円の価値があったのですが、古くなってしまい現在価値は0億円となってしまいました。

 

倒産したので、お金を返す(弁済する)必要があるのですが、その時にお金を返すのに決められている順番がさきほどの①⇒②⇒③⇒④です。

 

今回は、100億円の土地があり、売却に伴い会社は100億円用意できました。設備は無価値なので計算に含めません。

 

そうするとどうなるでしょうか。

①の全額と②の一部が返済可能です。

 

①の借入金(社債)の80億円は、すべて弁済(100%元本が戻ってきました。)

②の劣後債の70億円のうち、20億円だけ弁済(約30%ほど元本が戻ってきました

。)

③、④の出資者については、1円も戻ってきません。

 

このシミュレーションは、残余財産がいくらかによって勿論変わりますが、弁済順位が上位の方が、帰ってくる可能性は高くなります。

 

 

 

 

 

f:id:semiken:20160621141923p:plain

 

もう一度振り返ってみますと、価格変動リスクを含め、リスクが高いのが④普通株式、ただしリターンも勿論大きいです。倒産時には、弁済順位が低いことからお金がかえって来ない可能性もありリスクが高いことは覚えておきましょう。

 

 

 

3.なぜ、劣後債が相次ぎ発行されているのか

本題になります。劣後債が相次ぎ発行されています。銀行も発行していますが、生保もかなり発行しています。最近の生保の発行だけでもこれだけあります。

 

f:id:semiken:20160621142601p:plain

 

生保では、劣後債も広義の自己資本とみなされるため、劣後債を積極的に発行しています。

生命保険会社の自己資本

 

生命保険会社の自己資本 株式会社の資本金にあたる「基金」のほか、大災害など想定を超える自己に備えて積み立てる「危険準備金」、予想を上回る株価下落などに備える「価格変動準備金」などで構成する。

 

返済順位が低い代わりに金利が高めの劣後債も広義の自己資本とみなされる。資本が厚くなると保険支払い余力を示す指標が押し上げられ、財務の健全化につながる。(日本経済新聞 2016年6月21日 朝刊)

 

難しい説明なのですが、通常、自己資本というのは普通株式や利益剰余金のことをいいます。下図でいう、③、④の純資産の部分が自己資本です。

 

ただし、生命保険会社は独自ルールをもっており、劣後債も自己資本に算入していいというものがあります。つまり下図の、③、④の緑色部分は自己資本だということです。

 

f:id:semiken:20160621150737p:plain

 

生命保険会社は厳しいルールのもと、ある程度自己資本比率を保つことなどが取り決められているため、自己資本比率を高く保つことを意識しています。

 

一方、投資家は、低金利が続く中、債券投資で投資先に困っている状態です。多少リスクがあっても、利回りが高い劣後債に魅力を感じています。

 

(例)

一般社債(シニア)

100億円 期間5年 クーポン 0.5%

劣後債(ジュニア)

100億円 期間5年 クーポン 0.8%

 

 

f:id:semiken:20160621144413p:plain

 

生保は、自己資本を下げたくないので、多少の金利増なら劣後債を発行したく、投資家も利回りが高い商品が喉から手が出るほど欲しいのが現状です。先ほどの例でもある通り、発行体が倒産した場合は、弁済順位が「劣後」するので、発行体のリスクには要注意です

 

 いかがだったでしょうか。生保の劣後債発行は最近に限ったものではなく、数年前から徐々に活発になってきていました。ここにきてますます加速しているといった感じでしょうか。日本では、劣後債や優先株といった資金調達はあまりメジャーではありませんが、投資家としても選択肢が増えることは良いことだと思います。投資する際には、発行体のリスクに注意しましょう。